2020.10.17 閉店しました。
芸術銭湯+Café 宮の湯 は2020年10月17日をもって閉店いたしました。これまで皆さまに頂いた格別のご愛顧に、心より御礼申し上げます。皆さまと過ごした時間を決して忘れません。誠にありがとうございました。
ここで出会った仲間たちとともに新たなプロジェクトを始動しました。千葉県のとある森を「図書森」にします。世界のどこにもない美しい森を創るので、ぜひこちらにも遊びにいらしてください。(鉄道で行けます)
芸術銭湯+Café 宮の湯 は2020年10月17日をもって閉店いたしました。これまで皆さまに頂いた格別のご愛顧に、心より御礼申し上げます。皆さまと過ごした時間を決して忘れません。誠にありがとうございました。
ここで出会った仲間たちとともに新たなプロジェクトを始動しました。千葉県のとある森を「図書森」にします。世界のどこにもない美しい森を創るので、ぜひこちらにも遊びにいらしてください。(鉄道で行けます)
事前予約のお願い
不特定のお客様同士の接触を一切なくすため、現在、完全予約制で1組様ずつのご入場とさせていただいています。また、ご来店時にはマスクの着用をお願いしております。自由に芸術を楽しむことのできる日常が皆さまのもとへ1日も早く戻ってくることを願いながら、今は安全のために万全を期してまいります。お客様にはお手数をおかけしますが、下のカレンダーより事前にご予約のうえご来店いただきますようお願い申し上げます。
※完全予約制による入場制限は2020年5月末まで実施し、6月以降は通常営業となる予定です。
メニューの中からお好きなワンドリンクをお選びいただけます。「今日の珈琲」は、芸術の場にふさわしい特別な豆だけを使用し、プレスで淹れます。個性際立つ稀少なコーヒーの味覚をご堪能ください。
温かい飲み物 / HOT
厳選した稀少な豆をフレンチプレスで淹れる贅沢な一杯です。
冷たい飲み物 / COLD
琥珀糖とは:寒天と共に砂糖を結晶化した「食べる宝石」です。
ワイン / WINE
芸術の空間にふさわしい孤高の豆だけを選び「今日の珈琲」を淹れます。高価すぎて飲んでいて罪の意識を覚えるほどの豆もありますが、ここは芸術の場、いつもと違っていいと思うのです。
COFFEE BEANS
今日の珈琲に使用する豆を一部ご紹介します
もはや説明不要の逸品であろう。世界中のコーヒー愛好家がゲイシャ種の一杯に焦がれる一方で、栽培が難しくあまりに生産性が低いために非常に貴重な品種となっており、価格の高騰はとどまるところをしらない。高価格のコーヒーが必ずしも美味しいわけではないというのは周知のところであるが、ことゲイシャ種においてそれはあてはまらない。特にパナマ産のゲイシャは幻想的と評されるほどに美味しい。
まず香りが豊潤だ。甘酸っぱい、大人の恋のような香りとでも言おうか。次にコーヒーを口に含むと、苦味、甘み、酸味の完璧な調和が深いコクに包まれて広がっていくのを感じる。ぜひブランデーのように舌の上で転がしてみてほしい。すべてが調和しながらも味覚のそれぞれに奥行きがあることに気づくだろう。ひとつひとつの味覚を捉えて感じるたびに、オーケストラを構成する楽器の音をひとつひとつ拾って聴くような愉しみがある。夜空の星々はそれぞれに音楽を発し、宇宙全体でハーモニーを奏でていると古代ギリシャ人は考えていたそうだが、ゲイシャ種のコーヒーを飲んでいると味覚が奏でる音楽のハーモニーもあるのではないかと思えてくる。
子どもの頃、大人の世界は嘘で塗り固められているように見えた。大人になり、その嘘の数々は思いやりから生まれているものだと知った。自己嫌悪に陥ることもある。苦い思いに打ちのめされることもある。それでも家族や仲間を守りながら精一杯誠実であろうとする素敵な大人たちへ、この味覚のハーモニーを贈りたい。酸いも甘いも知り、それらを味わうことができるようになった大人のためのコーヒーだ。
ジャマイカ産で最高の豆はブルーマウンテンNo.1、次にハイマウンテンというのが一般的な認識であると思われる。しかし、時おり出会う奇跡のような一杯は、ブルーマウンテンよりもハイマウンテンにおいて出現することが多いように感じられる。ハイマウンテンのほうがコンディションの良い豆を入手しやすいからというような理由もあるかもしれないが、そもそもハイマウンテンはブルーマウンテンとは似て非なる独特の味覚を帯びている。
カミーユ・クローデルという彫刻家をご存知の方は、彼女がロダンの弟子であり愛人であったこともご存知であろう。彼女について語られるとき、必ずといってよいほどロダンとの関係が取りざたされ、彼女の作品はロダンに付随するもののような扱いを受けることもあった。しかし、作品を観るほどに、カミーユの作品は決してロダンの陰に隠れているべきものではないということに気づかされる。どこかハイマウンテンの存在に通じるものを感じる。ロダンとカミーユは違う。ブルーマウンテンとハイマウンテンも、似てはいるが違う。ハイマウンテンを味わうたびに、カミーユ・クローデルの狂おしく透明感のある生き様と、強くかつ不思議な柔らかさのある独自の作風を思い出す。
甘みと苦みの中から突き抜けてくる鋭い酸味でエキセントリックな個性を放つブルーマウンテンNo.1と比してどこか優しさのようなものを感じさせてくれるハイマウンテンが、とても好きだ。
カップ・オブ・エクセレンス(COE)とは、その年に各国で生産されたコーヒーの中から最高の一杯を選ぶ品評会のことであり、コーヒー業界の芥川賞のようなものである。毎年、独自の味覚を持つ個性的な品種がCOEを受賞し、COE2020といった称号とともに世界中から賞賛を浴びる。とはいえCOE受賞作の多くは日本において一般的な知名度があるとはいえない。また、受賞が非常な難関であるとはいえ各国各年で複数生まれる受賞作のすべてを網羅すれば相当な数の品種にのぼるためCOEのすべてを味わったことがあるという人は稀であろう。つまり、まだ皆が知らない個性的な味覚が綺羅星のごとく存在しているということだ。
すべてのCOE受賞品種、COE受賞を逃したすべての品種、あらゆる豆が情熱をもって生産されている。そのなかで自分に最も合う品種を見つけ出すのは至難であろう。芸術と同じだ。今この瞬間も表現に挑んでいる芸術家が世界に星のごとく存在する。そのなかで自分の魂に突き刺さる一つの作品に出会うのは奇跡のようなことかもしれない。他人が評価したものが自分にとって価値あるものとは限らない。どれほどの人の声に耳を傾けてみても自分にとっての最高を発見することはできないかもしれない。しかしそれは、自分が自分以外の人とは異なる個性を持った無二の存在であることの証であり、だからこそ探求は面白い。宮の湯は多くの芸術を魅せ、COE受賞品種を含む多くのコーヒーを淹れる。貴方が、貴方の魂を揺さぶる芸術に出会えること、貴方にとって最高の一杯に出会えることを願って。